【和菓子材料】砂糖②

前回に引き続き、砂糖についてのお話です。
今回は砂糖の役割に焦点を当ててまとめてみたいと思います。
(前回に続いて文字ばかりになりますが、お付き合いください。)

まず思い付くのが「甘味」ですね。これは調味料である砂糖のもっとも重要な役割と言えます。

2つ目が「保水作用」。こちらはこれまでの和菓子作りの投稿でもご紹介しました。
草餅のレシピのように、餅生地に糖分が入ることによって固くなりにくくなるというあれですね。
この理由を簡単に説明すると、”砂糖の粒子と水分が結びついて、水分が逃げにくくなる” ためです。
もう少し詳細にお話しすると、食品中の水分は「結合水」と「自由水」に区別されます。「結合水」は食品を構成している分子と結合(水素結合)している水分子を指し、「自由水」は結合していない水分子を指します。結合していない「自由水」は食品中を自由に移動できるため、簡単に食品から逃げて行ってしまいます。
砂糖はこの「自由水」と結合して「結合水」に変化させるため、簡単には水分が逃げなくなります。
つまり餅生地に砂糖を加えると、餅生地内により多くの結合水を含むことができるため、水分が逃げにくくなります。これが固くなりにくいということに繋がるのですね。
(厳密にはデンプンの糊化、老化の説明が必要ですが、これは追々お話できればと思います。)

3つ目が「抗菌作用」です(制菌作用と言った方が良いのかもしれませんが)。
これは2つ目の保水作用と大きく関係します。食中毒や腐敗の原因となる細菌や菌類は、食品中の自由水を使って繁殖します。
つまり砂糖を入れて自由水を減らすことで、菌の増殖を抑えることができるのです。もちろん糖分が菌にとってもエネルギー源となる一面はあるので、少量使用しただけでは効果はあまり期待できないかもしれませんが。

4つ目は「脱水作用」です。よく料理で食材に塩を振って水分を抜くという工程がありますが、これは砂糖でも同じことが起きます。

5つ目は「結晶化」。黒棒のコーティングを作る時に黒砂糖と水を煮詰めるのですが、この時に鍋の中をかき混ぜると砂糖が結晶化してザラザラの舌触りになります。
同様の原理が使われているのがフォンダンです。フォンダンはフランス菓子のデコレーションやザッハトルテのコーティングに使われるのですが、日本だとシナモンロールの上にかかっている白いものが一番馴染みがあるかもしれませんね。
反対に攪拌せずに煮詰めていき、固めると飴になります。これは「ガラス化」と呼ばれており、結晶化よりも構造的にもろいアモルファスという構造を形成する現象です。

そして最後6つ目が「メイラード反応」です。これは砂糖の構成分子と主にタンパク質の構成分子とが結合して、メラノイジンという種々の化合物が生成する反応です。
トーストや味噌、飴色玉ねぎなどの多くの食品の色に関係があります。
またこの反応の過程でたくさんの香気成分が生成します。香ばしい香りなどができる、食べ物の美味しそうな香りにとても重要な反応です。

以上、長くなりましたが砂糖(糖類)の料理における役割についてまとめてみました。
このほかにもカラメル化など、まとめ切れていない部分もありますが、砂糖が甘味としてだけではなく様々な点で食品の美味しさに寄与していることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

お付き合いいただきありがとうございました。
今後も材料別にこうしたまとめを投稿していきたいと思います。

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